AIを活用したケアプランの実用化を目指しているシーディーアイ(ケアデザイン研究所・東京都中央区)。現在の開発段階や、情報技術がもたらす介護業界の変革の可能性について、岡本茂雄社長に聞いた。
──ケアプラン作成を支援するAI開発に注目が集まっている。現在の開発段階は。
岡本 これまでは、10万件を超えるデータの学習により要介護度の改善に繋がるケアプランを提案するという、中枢機能の確立に重きを置いていた。実用化にむけ、今夏からは、開発の第2段階に移り、より現場での使い勝手の良さを意識したデータを収集して、サービスとしての肉付けを行っていく。
実証実験の協力者には、使用感などをフィードバックしてもらい、より使いやすい機能を拡張していく。ユーザーインターフェイスの改良を進め、AIが導き出した結果を、利用者に対してわかりやすく伝える機能なども構築していく。
昨年11月に愛知県豊橋市で開始した実証実験では33名のケアマネジャーに協力してもらったが、夏からは60名に協力者が広がる。対象の高齢者は10倍規模に広がる計算だ。
また、新たに全国15法人・104名のケアマネジャーの協力を経て、試験導入を始めることが決まっている。
──実用化に向けて、この先どのような工程が必要になるのか。
岡本 先に触れた、実証先の拡充と同時に、業界の意識や仕組みの変革が必要だ。一例を挙げると、現段階のサービス設計では、AIが利用者の状況に応じたケアプランを3種類提案するが、ケアマネジャーには高齢者それぞれのニーズを掴み、ライフスタイルに合わせたプランを選択するなど、人間とのより深い関わりが求められるようになる。
介護保険制度も根本を見直す段階に来ているのではないか。豊橋市とは利用者の本位の「自立」を叶え、それが事業者にとっても自治体にとってもメリットになるような仕組みを、模索しているところだ。
当社が目指すのは「21世紀型の介護の実現」であり「AIの開発」は1つの手段であると考えている。
──最近では、他社でもAIの事業化を目指す動きが広がっている。
岡本 歓迎できる動きだ。会社設立当時は、介護の分野にAIを導入するというだけでアレルギー反応が起こっていた。技術の認知が進み、前向きに受け入れられ始めたのだと受け止めている。活用の仕方や場面を選択するための建設的な議論に期待したい。
また、当社の強みはプロダクトアウト型ではなく、介護・医療業界の人間が製品設計に深く関わっていることだ。システム開発を本業とする事業者とは、役割分担あるいは協力関係が築けると考えている。リーディングカンパニーとして利用者主体のケアプランが当たり前になるよう尽力したい。
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