医療系ITのインテグリティ・ヘルスケア(東京都中央区)は、オンライン診療システム「YaDoc」をサントリーホールディングス(大阪市)に提供する。サントリーは社員、及び家族の未病・重症化予防を進め、2016年に開始した「健康経営」を加速させる。
4日、インテグリティ・ヘルスケアの代表を務める医療法人社団鉄祐会祐ホームクリニックの武藤真祐医師と、サントリーHDの新浪剛史社長が共同記者会見の場で発表した。医師・経営者として著名な両氏の登壇は多くの注目を集めた。
サントリーグループは2016年よりウォーキングや健康合宿、ヘルスマイレージなど社員の生活習慣病予防、また家族の人間ドック費用補助など「健康経営」に関する施策を実行してきた。
第2弾となる今回の取り組みでは、「YaDoc」を使い社員と離れて暮らす後期高齢者家族へのオンライン診療、及び40歳未満の生活習慣病予備群社員へのオンライン保健指導を10月より開始する。まずは福岡や名古屋など特定エリアにおいて、オンライン診療の諸条件を満たす後期高齢者家族を対象に始める。
インテグリティ・ヘルスケアは、かかりつけ医のYaDoc導入を促進するため、日立ヘルスケアシステムズや富士通などクリニックの電子カルテにおいてシェア6割を占める5社と連携する。実際にはかかりつけ医の意向が強く働くため、高齢者のオンライン診療にどれだけYaDocが広がるかは未知数だ。
しかし、オンライン診療の活用促進をサントリーグループのような大手企業が始めることは、認知度を高めるという意味で効果が大きい。
サントリーグループでは年間10名前後が介護離職するといい、社内アンケートでも家族の健康に不安を抱えている社員が一定数いることがわかっている。特に家族が遠方にいて通院付き添いが必要な場合など、社員への負担は大きく仕事の生産性にも影響を及ぼす。オンライン診療の活用を会社が後押しすることで、介護離職を減らしたい考えだ。
新浪社長は「働き方改革同様に健康経営は重要テーマ」と位置付ける。
40歳未満の生活習慣病予備群社員にはタブレットを貸し出し、インテグリティ・ヘルスケアが提携する保健師らがオンラインで生活習慣改善を指南する。早期に介入することで健康維持・増進を図る。
YaDocの導入について新浪社長は、「武藤医師とは10年来の付き合い。彼の描く未来に企業として協力したい」と話した。
遠隔服薬指導 福岡で始まる
6月末、YaDocを使った全国初のオンライン服薬指導の公開リハーサルが、国家戦略特区に指定されている福岡市内で行われた。場所はHyuga Pharmacy(福岡県春日市)が運営する「きらり薬局名島店」。
同社は福岡県内を中心に訪問服薬指導を23店舗で展開。24時間態勢で薬を届けているが、患者・家族の中には夜間の依頼に気兼ねしてしまう人も少なくないのだという。
「薬剤師の負担軽減とともに、夜間でも気軽に相談してもらえるのでは」(黒木哲史社長)とオンライン服薬指導に期待を寄せる。
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