台湾・宜蘭で日本式認知症ケアを採り入れた介護施設が先月開設した。「食べさせるのではなく食べたくなる食事」、「自由を奪わない生活」が運営方針。現地のホテル運営会社が認知症ケアなど日本式ノウハウを台湾文化に合わせサービス提供する。
7階建ての約100床を有する介護施設のワンフロアのみを改装。台湾・日本双方の介護事業者と設計事務所が、日本式介護を台湾の文化に合う形で提供できるよう設計からサービス体制まで連携し開設にこぎつけた。改装費に約300万元(台湾ドル、約1100万円)を投じ、3階の約600平米のスペースに19床がオープンした。
プライバシーに配慮
多床室でありながらプライバシーを考慮。入居者のベッドのスペースを箪笥や家具で仕切り、プライバシー空間を確保。一方、ダイニングや廊下、バルコニーはパブリックスペースとしてコミュニケーションがとりやすいよう広めに設計した。リビングや図書館は、人目を気にせず過ごせるよう、半プライベートなスペースとした。
設備についても、認知症者をサポートする設計を随所に採用。自分の部屋を認識しやすいよう部屋のドアの色は全て違う色とした。床の色もパブリックとプライベートでさりげなく変化をつけた。
生活リハビリにもなるオープンキッチンでは、ビュッフェ形式で視覚、嗅覚、触覚を刺激。自宅で生活していた頃と同じように、野菜を洗ったり掃除をしたりお茶を入れたりすることで、自分の役割や居場所を見つけることができる。
自由に過ごせるリビングやダイニングなどの共有スペースは、スタッフの目が届きやすい設計にもなっている。「拘束ゼロ」を目指すため、床材は台湾の施設で一般的な硬い石材やタイルではなく、柔らかい床材仕様としバリアフリー設計にも配慮した。
入居費用は月額4万2000元~(台湾ドル、約15万5000円~)。
運営は「財団法人宜蘭県私立力麗樂活老人長期照顧中心」。日本の社会福祉法人紘徳会(鹿児島県)が設立した台湾現地法人の綠之園健康事業股份有限公司が運営をサポート。設計はエーシーエー設計(長野市)と台湾企業が協業した。
紘徳会は、日本式介護を台湾でも展開可能にするため綠之園に対し、技術支援、講師派遣、研修受け入れなどをバックアップした。今回新設した施設では、紘徳会本部でリーダークラスのスタッフの研修を行い、口腔ケアや移乗、タッチケアを指導した。紘徳会は鹿児島県内を中心に特養、クリニック、デイサービス、訪問系サービスなどのサービスを手掛けている。
この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします
Twitterでフォローしよう
Follow @kj_shimbun