全国に約7万ヵ所あると言われている歯科クリニック。CLあたりの歯科医師数は1・5名程度と圧倒的に小規模経営が多い。そんな中、全国に32拠点・総歯科医師数180名を有し、年間延べ患者約90万人を診るのが医療法人徳真会グループ(新潟市)だ。国内にとどまらず歯科技工関連施設ではミャンマー、アメリカにも展開している。医療法人徳真会グループ/ゼネラルの松村賢専務に話を聞いた。
──法人全体の概要を
松村 東京、大阪、新潟、宮城、福岡で32拠点歯科CLを運営しています。そのほかアメリカ、シンガポール、スコットランドなど4ヵ国に提携医療機関、また当グループでは歯科技工物の品質向上にも取り組んでおり、技工所も国内、アメリカ、ミャンマーなどに多数拠点を有しています。
──患者数は
松村 国内で年間延べ90万人。シェアで見ると、全国では約330人に1人、新潟・宮城においては14~15人に1人が当グループを利用している計算になります。また、東京を皮切りに新潟、福岡では訪問歯科診療を手掛けており、施設・在宅約1200名にサービスを提供しています。
──小規模・個人経営が多い歯科業界の中で、ここまで拡大できた要因はどこにあると考えるか
松村 「高水準の医療とサービスを提供する」ことが目的であり、拡大はただの手段と考えています。当グループでは「クリニック」「歯科技工」「マネジメント」の各セクションが専門分野に専念できる体制を敷きながら、有機的な連携を図り、患者満足度を高めています。アンケートでは8割が診療・サービスに満足と回答していますが、これを限りなく10割に近づけることが目標です。
──満足度を高めるための取り組みは
松村 歯科診療に対する患者の一般的な不満に、①「治療が痛い、詰め物が取れる、治療期間が長い」など治療について、②「医師・スタッフの態度が良くない、治療内容・期間の説明不足、治療の選択肢の提示がない」などの態度・説明について、③「休日・夜間に営業していない、駐車場がない、清潔ではない」などの時間・環境についてなどがあります。こうした声を一つひとつ検討・改善していくことが必要です。
当グループではできる限り最先端の設備を導入、それに見合う技術を持った歯科医師を育成し適切な治療を提供すること、治療方針・選択肢を明示し、カルテを開示して積極的な情報提供をすることに努めています。CLは年中無休で夜も20時30分まで診療、また16のCLには子育て中でも通いやすいよう保育士を配置した幼児の一時預かり施設があります。新潟・福岡では高齢患者も多いことから送迎対応も行うなどして利便性を高めています。こうした一つひとつの積み重ねが信頼に繋がり、患者が患者を紹介してくれるという循環を生んでいます。グループ全体で毎月3000~4000名の新患が来院します。
──大型のCLという点も特徴だ
松村 一般的に歯科CLはビルインのテナント型や医師の自宅併設型など小規模なものが多いですが、当法人の場合は幹線道路沿いの独立した大型CLを基本としています。東京都稲城市のCLでは、保育所併設で敷地2000坪、75台分の駐車スペースを用意しています。ゆとりある空間設計で、診療・待合スペースの快適性にも力を入れています。清潔・開放的な空間でリラックスできることで、患者がスタッフに話しかけやすいという効果もあります。
──採用について
松村 歯科医師が180名、衛生士が170名、国内外総勢1300名超のスタッフがいます。他業界同様に採用は簡単ではありませんが、キャリアアップや研修制度を充実させるとともに、企業主導型保育施設を4ヵ所、認可保育園を1ヵ所設置するなど、子育てしながらでも無理なく働くことができる体制整備を進めています。
──訪問歯科診療も行っている
松村 往診は90年代から行っていましたが、訪問歯科診療を開始したのは2014年からです。外来と訪問ではサービス提供体制が全く異なりますので、しっかりとした体制ができてからスタートしようと考えていました。訪問歯科診療は診療技術以外に患者・家族とのコミュニケーション、また介護スタッフ、医師、など多岐にわたる職種との連携が重要です。診療技術があればいいということではありませんので、無理に拡大せず品質を担保しながら進めています。現在約1200名の患者がいますが、施設向けアンケートを見ても治療や対応に高い評価が得られています。
──超高齢社会での役割は
松村 近年、子供の虫歯は大幅に減っている一方で、高齢者における誤嚥性肺炎の罹患率が増加しています。これを予防する取り組みが重要だと考えています。誤嚥性肺炎にならないための日々の歯磨きの方法、口腔機能の維持・向上、入れ歯のメンテナンスなど口腔環境整備を含めた口腔ケアが重要です。当グループの歯科医師や衛生士が高齢者施設などに出向き、口腔内の健康に関する啓発活動を行うことも増えてきています。いつまでも安心・安全に口からものを食べることができるよう、当グループとしてできる限りのことをしていきたいと考えています。
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