日経のサ高住記事に違和感
日本経済新聞の2月3日の1面トップ記事「漂流する社会保障」が業界内で大きな話題となっている。記事では「低価格のサービス付き高齢者向け住宅に介護を必要とする人が大量に流入している。本来特養で受入れるべき人達がサ高住に入ることで、介護報酬などの公的支出が膨らむ懸念がある」としている。しかしこの記事は、サ高住の役割や状況を正しく認識しておらず、必要以上にサ高住を低く評価している。この記事について、詳しく検証してみよう。
サ高住は要介護3以上が全体の約3割
記事では、一般社団法人高齢者住宅協会が運営するサ高住情報提供システムでの公開データをもとに1862棟のサ高住について家賃と入居者の要介護度の相関関係を分析している。その結果、全戸数に占める要介護3以上の住民の比率は34%となった。これが家賃8万円以下の物件では48%になり、逆に14万円以上では20%にとどまった。
この調査結果を受け、記事では「本来、要介護3以上の低所得者の受け皿は特養だが、人員不足等で特養が新規受入れに消極的な中で、彼らがサ高住に流れている」「安価なサ高住では、安い家賃だけでは採算が取れず、介護サービスを必要以上に多く提供しがちである」「結果として、特養に住むよりも公的給付が増える」という三段論法で、現状を問題視する。
サ高住の平均要介護度は有老ホーム並み
しかし、この論調には相当に無理がある、と言わざるを得ない。
まず、要介護高齢者と自立高齢者では、当然ながら後者の方が生活する上で広いスペースが必要だ。彼らを対象にすれば部屋が広くなり、その分家賃が高くなるのは当然のこと。「低家賃ほど要介護者が多い」のはわざわざ統計など取るまでもない話だ。
また、記事では「(サ高住は)自立した高齢者向けとの想定に反し」とあるが、「サ高住が自立高齢者向け」とは一体どこの誰が言っているのであろうか。
制度創設間もないころは、国土交通省の職員が講演の場などで「サ高住は軽度要介護者向け」と発言をすることもあった。しかし、実際には入居者の平均要介護度は介護付有料老人ホームとほぼ同程度であり、国交省もやがて「軽度者向け」を口にしなくなった。にもかかわらず、「自立者向け」とは状況を正しく認識しているとは言い難い。
「格安サ高住」の供給は減少傾向
「介護サービスを必要以上に…」も同様だ。確かに安価モデルで急成長を遂げたサ高住運営事業者の中には、そうした介護を提供していたといわれる会社もある。
しかし、ここ何度かの介護報酬改定で訪問介護や通所介護の同一建物減算が厳しくなったことや、行政がこうしたケアプランに対するチェックに厳しく目を光らせるようになったこともあり、こうした事業モデルの会社は、今は、ほとんどサ高住の新設はしておらず、新設する場合もサ高住ではなく特定施設が主になっている。
つまり「低家賃で介護サービスたっぷり」というサ高住はビジネスモデルとしては”とっくに終わったコンテンツ”だ。このコンテンツを今さら引っ張り出してのサ高住批判は的外れだ。
もちろん、現状、サ高住が数々の問題を抱えていること自体は否定しない。その問題を指摘することもマスコミの重要な役目だ。しかし、指摘・批判をするならもう少し現実を正しく把握したうえでの批判が必要なのではなかろうか。
本紙では今後も、この記事についての検証を行っていく。次回以降はこの記事への有識者たちの意見について紹介する。
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