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「処分まで2年は裁量権逸脱」
神奈川県横須賀市は2月18日、昨年医療法人社団清光会が運営する通所介護事業所などに対して行った指定取消処分を取消した。自治体が自らの判断で指定取消処分を取消すのは異例のことだ。

 

 

約1900万円を事業者に返還
市では、同法人が運営する通所介護および居宅介護支援事業所について、虚偽の指定申請、人員基準違反、運営基準違反、不正請求があったとして指定取消処分を行った。
処分発効日は通所介護が昨年4月1日、居宅介護支援はすでに事業所を休止していたため昨年3月27日付け。また、両事業所合計の不正請求額は約1352万円であり、市では40%の加算金を加えた額について返還を求め、約1892万円が市に返還されていた。
しかし、同法人は行政不服審査法の規定により「指定取消処分の取消」を求める審査請求を市に対して行った。市によれば介護保険事業者による審査請求は初だという。

 

審査会は「市が事業所の虚偽指定申請を認識したのが2016年2月。処分を行うまでに2年以上要しているのは裁量権の逸脱濫用に当たり、違法な処分である」と判断。これを受けて市では指定取消処分を取消した。返還された約1892万円については、同法人に返還する予定だ。

なお、市福祉部指導課では、今回処分決定までに2年以上を要した理由について「処分の程度を決定するにあたり、従業者などの答弁の突合せなど、全容調査に時間を要した」と説明している。

 

今回の件は、いくつか疑問がある。
まず「処分決定までに要した期間が2年以上は長すぎて裁量権の逸脱濫用」というのであれば、どのぐらいまでの期間であれば適正なのかという点についても基準を示すべきである。市福祉部指導課でも「対象となる法人が大規模であったりすれば当然監査などに時間を要します」とコメントしている。
次に、指定取消から、取消処分が取消されるまでの10ヵ月強の間、法人は事業所の運営ができなかったことに加え、約1892万円を支払うなど経済的損失が大きい。また「指定取消を受けた法人」という風評被害など間接的な経済的損失もある。これらが原因で事業所が倒産などした場合、行政は何らかの救済をしてくれるのだろうか。

 

自治体の指導・監査が厳しくなっていると言われている中で、法人側が処分内容に不満を持ち、審査請求を行うケースも増えていくことが考えられるだけに、今回の一件は大きな波紋を呼びそうだ。

 

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