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東日本大震災から8年が過ぎた。震災直後は介護事業者の防災や万一の際の避難などに関する意識が高まったが、時がたつにつれ、そうした意識も薄れがちになっている点は否めない。そこで、実際に被災した介護付きホーム(特定施設)「いわきふるさとの楽園」(福島県いわき市・運営福寿会)に、震災時の様子やその後の苦労点、必要な防災対策などについて話を聞いた。

水道の復旧に20日間を要す
──法人やホームの成り立ちについて教えてください。
志賀 私の義父が、いわき市で住宅団地の開発に携わりました。開発が終わったあと「自分が手がけた団地の住人の役に立つものを作ろう」と、団地のはずれの土地を買い、1978年に有料老人ホームを開設したのです。昨年で40周年を迎えました。民間事業者が手がける高齢者住宅としては、東北では初でした。いわきは温暖な地域でしたので、当初は東京などから移ってくる人が大半でした。

──東日本大震災による被害の状況は。
志賀 幸いにも建物自体の被害はそれほどではなく、また福島第一原子力発電所の事故による避難対象地域外でしたので、震災後も介護付きホームとしての運営は行うことができました。しかし、水道が復旧したのは震災の20日後でした。水道事業者自体が原発事故で自主避難してしまっていたからです。
いわき市の場合は、原発事故という特殊な事情があったかもしれませんが、震災は広域災害ですし、万一の際に私たちを支えてくれるはずの公共インフラ企業自体が被災したり避難したりで機能不全に陥ってしまう可能性があります。いくら「我々がサポートします」という企業と契約していても、それらが機能しなくなることも想定し、万一の際には、それぞれの高齢者住宅が独自に情報を集め、できることを自分で考え、入居者と従業員を守る体制を構築しなくてはなりません。

──水の問題は、どのようにして解決したのですか。
志賀 隣接して沼がありましたので、そこの水をポンプでくみ上げてトイレ用に使いました。また同じいわき市でも断水していない地域がありましたので、その地域にある高齢者住宅に洗濯機を借りに行ったりしました。日頃から、そういったことを頼める関係を構築できていたことが大きかったと思います。

 

「近所だけでなく遠方とも」

「業界団体の情報網を活用」

──平時からの高齢者住宅間の協力・連携が大事ということですね。
志賀 確かにその通りですが同じ地域・市内・県内などの事業者と連携することはもちろん、遠方の事業者との連携も重要ではないでしょうか。

例えば、同じいわき市でも、全入居者を千葉県まで避難させた高齢者住宅もありました。地震後で通信事情・交通事情が混乱している中で、何十人もの入居者を受入れてくれるところを探し、介護が必要な利用者を移すのは容易ではありません。全国に高齢者住宅を運営している法人であれば、法人内で遠距離連携ができますが、小さい規模の事業者では難しいでしょう。万一の際は避難受入れなどで協力することを取り決めておくことが大切です。

──それに対する解決策はありますか。
志賀 業界団体の存在が非常に大きいと思います。当社は全国介護付きホーム協会や、全国有料老人ホーム協会の会員ですが、震災時には本部からの情報提供が大変役に立ちました。

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