現在一般の店に並んでいるシャンプー容器の上部と側面には、ギザギザが付き、目をつむって髪を洗う多くの人が、目を開けなくても触っただけでリンス容器と識別できるようになっている。
この工夫は、花王が約30年前に、目の不自由な人達から寄せられたシャンプーとリンス容器は、形が同じなため、先にリンスをしてしまったり、シャンプーの後にまたシャンプーをしてしまったという声が元になり、考えられた工夫である。
調査・研究を重ね、同社がギザギザ付きのシャンプーを発売したのは1991年11月。同社は、発売する前に、同業他社に説明する機会をもった。シャンプー容器にギザギザを付けることになった経緯と共に、実用新案を取得したことが同社より報告された。通常、実用新案を取得するのは、自社でその工夫を独占するためである。
しかし、花王の担当者からは「実用新案は無料で公開するので、どうぞ自由に使っていただきたい。実用新案を取得したのは、もしリンスにギザギザを付ける製品が出てくると、目の不自由な人が更に混乱してしまうため」と説明は続いた。
第一号が発売されてから28年、その間に、シャンプー容器のギザギザの工夫が大きな起爆剤となり、年齢の高低や障害の有無に関わらず共に使える製品やサービス(共用品・共用サービス)が広がっている。
私が所属する公益財団法人共用品推進機構では、ニーズ調査をもとに、製品・サービスの課題を抽出し、その課題を関係者で検討し、合意された解決案を、日本工業規格(JIS)並びに国際規格(IS)にする事業を行っている。今回より、アクセシブルデザインというフィルターを通してモノやことを紹介させていただく。
星川 安之(ほしかわ やすゆき)
公益財団法人共用品推進機構 専務理事
年齢の高低、障害の有無に関わらず、より多くの人が使える製品・サービスを、「共用品・共用サービス」と名付け、その普及活動を、玩具からはじめ、多くの業界並びに海外にも普及活動を行っている。著書に「共用品という思想」岩波書店 後藤芳一・星川安之共著他多数
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