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厚生労働省は、行政の介護サービス事業所に対する実地指導における、いわゆる「地方ルール」を是正することを目的に、実地指導標準化に向けた運用指針を策定。5月29日付で各保険者に発出した。

標準化・効率化図る
集団指導の活用も
介護サービス事業所に対する実地指導については、2006年10月23日に厚労省が「介護保険施設等の指導監督について」という通知を行っている。しかし「通知後一定期間が経過し、自治体ごとに指導の内容や確認項目・確認文書に様々な差異が生じている」と厚労省も指摘する。

こうした、自治体ごとの指導の差は、いわゆる「地方ルール」と呼ばれ、かつてより介護サービス事業所の間では問題視されて来た。
「他の市では全く何の問題にもならなかったことが、他の市では『問題あり』と指摘されることもある。説明しても『市のルールだから』と取り合ってくれない。市ごとに建物の仕様や運営方法を変えなくてはならず、事業の広域化を図る上で大きなネックになっていた」とある大手介護事業者は語る。

また、こうした「地方ルール」が自治体の担当者の理解不足によるものの場合、人事異動によって担当者が変わると、ルール自体も変更になることもあり、混乱に余計に拍車がかかることもあった。
こうした点を受けて制定された今回の運用指針は「指導の標準化・効率化を図り、実地指導の実施率を高める」のが狙い。主な内容は上記囲み記事の通り。
また、実地指導の頻度については、厚労省は「指定の有効期間内に最低でも1回」としているが、今回の指針による指導の標準化や効率化を図っても、それが困難な場合には「過去の実地指導などから特に問題がないと認められる事業所の場合は、集団指導のみとすることなども検討する」としている。

 


※運用指針の主な内容
〇実地指導の実施については、原則1ヵ月前までに事業所に通知。当日の概ねの流れを予め示し、当日の確認が円滑に行えるようにする
〇利用者へのケアの記録確認は原則として3人以内
〇確認する文書は、原則実地指導の前年度から直近実績まで。また提出を求める資料の部数は1部とし、自治体がすでに保有している文書については再提出を求めない
〇担当職員の主観に基づく指導や、根拠なく前回の指導内容と大きく異なる指導を行わないよう留意する
〇事業所の管理者以外に、実情に詳しい従業員や運営する法人の労務・会計等の担当者が同席することは問題ない

 


※「認知症政府大綱案」見直し
数値目標 設定せず
政府は、5月18日に発表した認知症大綱案で示した「70歳代での認知症発症を10年間で1歳遅らせる」という数値目標を取り下げる意向だ。6月4日、根本匠厚生労働大臣が表明した。

この数値目標については、認知症当事者などから「頑張って予防に取り組んでいながら、発症した人が自信をなくす」などの意見が寄せられたという。
それを受けて「70歳代での発症を10年間で1歳遅らせること自体を目標にするのではなく、予防の結果として、そうなることを目指す」と表現を改める。
また認知症予防については、「老化に伴って誰もがなり得る」「運動不足、生活習慣病、社会的孤立などの危険因子を避けることで発症を遅らせることができる」とし、今回の大綱案での予防の定義について「認知症にならない」という意味ではなく、「なるのを遅らせる」「進行を緩やかにする」という意味である、との見解を示した。

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