「経済財政運営と改革の基本方針2019」いわゆる「骨太方針2019」の原案が示されました。本コラム執筆段階では原案が示されており、6月中には閣議決定される予定であります。今回は、この「骨太方針2019(原案)」の中身を読み解いていきたいと思います。
今年度の「骨太方針2019(原案)」は来月に迫った参議院議員選挙の直前であることから、社会保障関連の改革については、関係各位に大変配慮した内容であると感じます。社会保障・介護関連にフォーカスして確認していくと、自民党厚労部会のプロジェクトチームにおいて示された「全世代型社会保障への改革」という基本スタンスがまず示されています。その上で、「健康寿命の延伸、疾病・介護予防、認知症予防の推進」、「介護インセンティブ交付金(保険者機能強化推進など)の拡充」、「介護人材等の処遇改善」、「外国人材の円滑かつ適正な受け入れの促進」、「行政手続きのオンライン化、ワンストップ化の促進」といった従前より議論されてきた中身が、各所に整理して記載されています。
そして、我々介護業界にとっては最注目となる「医療・介護制度改革」の項目は、「持続可能な社会保障制度の実現に向け、医療・介護サービスの生産性向上を図るため、医療・福祉サービス改革プランを推進するとともに、地域包括ケアシステムの構築と併せ、医療・介護提供体制の効率化を推進し、1人当たりの医療費の地域差半減、介護費の地域差縮減を目指す。診療報酬や介護報酬においては、適正化・効率化を推進しつつ、安定的に質の高いサービスが提供されるよう、ADLの改善などアウトカムに基づく支払いの導入等を引き続き進めていく」との表現にとどまり、肩透かしのような内容です。
「骨太方針2018」において示された、ケアプラン作成(利用者負担の設定)・多床室室料(室料相当額の除外)・軽度者への生活サービス(要介護1・2の総合事業への移管)といった具体的な削減案は、全て記載されておりませんでした。
唯一の具体的文言は「ADLの改善などアウトカムに基づく支払い」でありADL等維持加算などの拡充方針のみでした。
だからといって政府の削減方針が後退したと安心してはなりません。冒頭にも示した通り、あくまで参議院選挙直前で、関係団体への配慮から文言をマイルドにしたにすぎず、「適正化・効率化を推進しつつ」との表現に全てを織り込んでいるわけであり、選挙以降の動向、そして来年度の「骨太方針2020」こそ、今後、最も注視していくべきなのです。
斉藤正行プロフィール
2000年3月、立命館大学卒業後、株式会社ベンチャーリンク入社。メディカル・ケア・サービス㈱の全国展開開始とあわせて2003年5月に同社入社。現在の運営管理体制、営業スキームを構築し、ビジネスモデルを確立。2005年8月、取締役運営事業本部長に就任。2010年7月㈱日本介護福祉グループ副社長に就任。2018年4月㈱ピースフリーケアグループ代表に就任。2018年6月、介護業界における横断的・全国的組織となる一般社団法人全国介護事業者連盟を結成。㈱日本介護ベンチャーコンサルティンググループの代表を務めている。
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