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---医療・介護が変わるto2025---
日本版ラヒホイタヤ

 

今年8月下旬、夏休みを利用して高齢者住宅新聞社主催のフィンランド・リトアニアツアーに参加した。今回は、視察したフィンランドの医療・福祉10種類を統合した専門職ラヒホイタヤの報告をしたい。

 

我が国では少子高齢化にともない、少ない人手で効率的に医療・福祉を回していかなければならない。そのためには、教育も大きく変えなければならないだろう。考えられているのが、医療・福祉の複数資格へ、共通の基礎課程の導入だ。個人が複数の資格を取りやすくすることにより個人の能力をフル発揮してもらえる。

 

こうした仕組みに参考になるのがフィンランドのラヒホイタヤだ。ラヒホイタヤは社会・保健医療基礎資格のことで1993年に制度が創設された。その背景はフィンランドの高い高齢化率、医療・福祉人材不足、さらに在宅ケアの充実の必要性からだった。

 

ラヒホイタヤで統合した資格は以下の10職種である。保健医療では准看護師、精神障害看護助手、歯科助手、保育士、ペデイケア士、リハビリ助手、救急救命士、社会ケアでは知的障害福祉士、ホームヘルパー、日中保育士。

 

ラヒホイタヤ養成は中学卒業後、3年間の専門学校教育で行われる。1年目は教養科目、語学、医療・福祉の理論教育と実習、2年目は高齢者実習などが中心、3年目は障害者、精神、薬物依存などの専門教育が行われる。社会人入学の場合の教育は2年目からの教育で済む。ラヒホイタヤ養成の学費はすべて無料、全国で77カ所の養成校があるという。実際に社会人入学の学生の教育が行われている実習室も視察したが、移民の人も交じって実習が行われていた。

 

 

さてフィンランドではラヒホイタヤの資格を取得した場合、保育園や在宅サービス、通所型ケア、地域の公設医療センターのヘルスセンター、病院やリハビリホームやナーシングホームなどで働くことができる。資格を取得した人の医療施設・福祉施設への就職率は100%だという。

 

介護人材に関していうと、この資格により、人材の質が高まったため短時間・高賃金の労働が可能になった。このため介護人材の離職減少にも役立ったという。
人口減も目前にして、日本版ラヒホイタヤの検討は避けられない問題だ。ぜひ9月20日に発足した安倍首相を議長とする全世代型社会保障会議のテーマの一つとして取り上げてほしいものだ。

 

武藤正樹 国際医療福祉大学大学院教授

1974年新潟大学医学部卒業、国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中86~88年までニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学。94年国立医療・病院管理研究所医療政策部長。95年国立長野病院副院長。2006年より国際医療福祉大学三田病院副院長・国際医療福祉大学大学院教授、国際医療福祉総合研究所長。政府委員等 医療計画見直し等検討会座長(厚労省)、介護サービス質の評価のあり方に係わる検討委員会委員長(厚労省)、「どこでもMY病院」レセプト活用分科会座長(内閣府)、中医協調査専門組織・入院医療等の調査・評価分科会座長

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