【TOP対談】
昨年9月に学研ホールディングス(東京都品川区)がメディカル・ケア・サービス(以下・MCS/さいたま市)を統合し、1年余が経った。学研のサ高住運営、そしてMCSの認知症ケアという両社の強みを活かし、どのようなシナジーが生まれているのか。学研ココファンの五郎丸徹社長、MCSの山本教雄社長の対談を伝える。
──統合から1年、改めて互いの評価は。
山本 学研ココファン設立時から13年にわたりお互いに交流を図ってきました。内部から見て改めて感じるのは「組織として当初から大切にしてきた理念が、末端の職員にまで浸透している」こと。これだけの規模では大変難しいことだと思います。
私も学研ココファンの入職者向け研修などに参加しましたが、全社員に対して学研の創立からサービス付き高齢者向け住宅の成り立ち、現状までを、社長自ら社員に直接話す機会を設けている。こうした研修は、すぐにMCSでも取り入れました。
五郎丸 MCSは、グループホームに特化してきたからこそ認知症ケアに対する思いが本当に強い。一人ひとりの職員の専門性が成熟していて、一歩進んでいると感じます。また、学研ココファンより4年早い設立、そして上場の経験から、組織が重層化して安定している。そのノウハウも取り入れていきたいと考えています。
求人応募 倍以上に
──具体的な成果は。
五郎丸 シナジー創出のため、入居、教育、採用、開発など、各分野でプロジェクトを進めてきました。入居に関しては、サ高住入居者の認知症が重度化した際にGHに転居できる、また満室のGHからサ高住に転居できるといった相互補完により、創客に繋がっています。
開発においては、学研ココファンでは50戸以上のサ高住にこだわって建てていますが、小規模案件もGH開発で着手できるようになりました。
山本 特に成果を感じたのは採用面ですね。ブランド認知度の高い「学研」の名前は、ハローワーク利用者層に強い。求人票も学研ココファンのテンプレートを参考にして何千件と出しなおしたところ、従来の倍以上の応募がありました。職員紹介の仕組みも統一して、LINEで紹介し合えるリファラル採用の運用を始めます。
──人材定着策について。
山本 昨年11月に総額5億円を投資して給与ベースと地域格差の見直しを行い、さらに今年10月には、新特定処遇改善加算に伴い職能等級を評価するベースの上乗せを実施しました。全体の底上げはもちろんですが、能力や資格にウエイトを置いていく考えです。
五郎丸 学研ココファンでも、10月からの処遇改善に加え、同等の持ち出しで介護職の給与の底上げを行いました。
また、学研とMCSは、施設の展開地域も全体の3分の2で共通しています。地域単位での入居連携に関するプロジェクトも奏功しており、地域の中で横の繋がりができている。このことも、人材定着に寄与していると思います。
サ高住とGHで入居者補完
──制度ビジネスを手掛ける上での考えは。
五郎丸 サ高住や住宅型など外付けサービスの事業所は、批判されることもあります。しかし、高齢者施設を全体的にみると、平均要介護度が3以下であることが多い。そうした場合には、サ高住は明らかに介護保険を使わない低コストの類型です。要介護度が重くなると定額制もメリットが多くなるので、特定施設も運営しています。
併設事業所の囲い込みなどの指摘もありますが、事業として良いサービスを提供するために必要なこと。入居者に他サービスを利用する選択肢を与えないことや過剰なサービスが悪であるだけだと思います。
山本 MCSでは、認知症の進行緩和と重度化防止に注力しています。入院せず、可能な限り在宅で生活できるよう入居者の状態安定に努めることは、医療費抑制にも寄与します。
「自立支援介護」を推進してきた中で、BPSDの頻度と重症度や介護者の負担度を数量化するNPI─NHなど定量的な評価面で明確な改善もみられている。加算取得は外せない要素なので、CHASEも視野に入れます。
──今後の展望について。
五郎丸 従来の学研のサービスにGHが加わったことで、0歳から100歳を超える高齢者までが地域で共生できる「学研版地域包括ケアシステム」の構築を加速させていきます。2022年には第3弾となるサスティナブル・スマートタウンが大阪府吹田市に開設予定で、学研はそこでウェルネス複合施設をオープンします。サ高住・GHのほか、保育所や学習塾を併設し、高齢者福祉と教育の拠点とします。
山本 保育や塾など、GH運営だけではできなかった複合的なサービスを提供できるというのは、新しい可能性です。世の中のために真に役立つサービスを、グループ全体で進めていきたい考えです。
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