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---連載 点検介護保険---

 

病院での死亡率が年々低下し75%まで下がった。14年前には82%まで高まっていた。在宅医の役割がますます重要になってくる。ところが「在宅医の活動内容が見えない」「終末期まできちんと診てくれる在宅医を探せない」という声をよく聞く。

 

 

そこで、唯一手掛かりになるのが、全国の在宅医の年間看取り数だろう。朝日新聞出版が10月に発行した「さいごまで自宅で診てくれるいいお医者さん・2020年版」にその最新数値が示されている。
医療機関が厚労省に提出したデータを情報開示請求して一覧表にした。看取り件数が年間12件以上の診療所と病院を掲載。2685の医療機関をとり上げた。対象期間は17年7月から翌年6月までの1年間。市区町村別に掲載されている。

 

 

その中から、筆者が年間看取り数の多い診療所を抜き出し、上位10位までを並べたのが表である。トップは、浜松市にある「坂の上ファミリークリニック」の371件、第2位は341件の東京都葛飾区にある「わたクリニック」となった。

 

対象期間が2015年から1年間の前回調査と見比べると1、2位が入れ替わった。坂の上ファミリークリニックが前回より50件増え、わたクリニックが23件減ったためだ。
3位は四日市の「いしが在宅ケアクリニック」で、4位は横浜市の「めぐみ在宅クリニック」。ここでも前回から3、4位が逆転した。この4位までが300件以上の看取り件数となり、5位以下を大きく引き離している。いわば「看取りの4強」と言えるだろう。

 

 

とはいえ、5位以下でも5つの診療所は前回も10位以内に顔を出しており、第2グループをしっかり形成している。「みらい在宅クリニック」(横浜市)をはじめ「五味クリニック」(千葉県市原市)、「立川在宅ケアクリニック」(東京都立川市)、「三つ葉在宅クリニック」(名古屋市)、「小磯診療所」(横須賀市)である。

 

 

今回、10位以内に新しく入ったのは東京都板橋区の「やまと診療所」。2013年に安井佑医師が在宅専門診療所を都営地下鉄高島平駅近くで開設したニューフェース。施設での看取りが1件しかない。自宅への訪問診療に徹している。訪問時に、無資格者を医師の助手として活用するユニークな試みが奏功しているようだ。

 

以上のランキングは個別の診療所での看取り数だが、法人別でみると順位は変わる。第2位のわたクリニッを持つ医療法人社団淳友会は、隣接の江戸川区で「わたクリニック船橋」を運営しており、その看取りは136件なので、合計では485件に達する。

 

 

一方、坂の上ファミリークリニックは同じ浜松市内に「坂の上在宅医療医療支援医院」を持っており、その看取り13件を合わせると384件になる。このため、法人としては、わたクリニックが断然第1位となる。

 

だが、東京都と埼玉、神奈川県で11もの診療所を展開する大きな法人がある。医療法人社団悠翔会だ。当該誌「さいごまで…」に掲載されている「悠翔会在宅クリニック川口」「悠翔会在宅クリニック金町」など10か所の診療所の看取り数を合計すると475件になる。加えて、18年3月に開設され、同年6月までの看取りが11件の「悠翔会くらしケアクリニック練馬」を合わせると486件に達する。
わずか1件差だが、法人別の看取り数の第1位は悠翔会になるようだ。

 

 

浅川 澄一 氏
ジャーナリスト 元日本経済新聞編集委員

1971年、慶応義塾大学経済学部卒業後に、日本経済新聞社に入社。流通企業、サービス産業、ファッションビジネスなどを担当。1987年11月に「日経トレンディ」を創刊、初代編集長。1998年から編集委員。主な著書に「あなたが始めるケア付き住宅―新制度を活用したニュー介護ビジネス」(雲母書房)、「これこそ欲しい介護サービス」(日本経済新聞社)などがある。

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