---第82回 規制改革推進会議医療・介護ワーキング---
昨年10月からスタートした規制改革推進会議の医療・介護ワーキンググループ(座長 大石佳能子メディヴァ社長)の専門委員を務めている。
規制改革推進会議とは、経済社会の構造改革を進める上で必要な規制の在り方を調査審議する会議で、内閣総理大臣の諮問機関である。昨年10月以来1ヵ月に2回ペースの開催で、今年6月の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)へ向け精力的に検討が進んでいる。
医療・介護ワーキングの検討テーマは昨今の働き方改革におけるタスク・シフティングやオンライン診療などを検討している。
今回は規制のために遅々として進まぬオンライン診療について見ていこう。在宅の患者と診察室を結んで行うオンライン診療は、実は医師法20条の「対面診療の原則」により長らく認められてこなかった。技術的には特に難しいことではないのだが、オンラインで行う診療は「対面での診療には当たらない」との認識からだった。しかし近くに病院がなく、遠くの病院に行くだけでも1日がかりという地域もあり、オンライン診療のニーズは高まっている。このため2018年4月の診療報酬改定で、オンライン診療と対面診療を組み合わせた新たな診療形態を、在宅医療や外来診療において認めることとなった。
しかしその利用状況は思わしくない。18年の7月調査で、オンライン診療を届け出た病院65ヵ所、診療所905ヵ所のうち算定件数はオンライン診療料65件、オンライン医学管理料15件、オンライン在宅管理料に至っては4件と極めて低調だった。
その原因はいくつかあるが、中でもオンライン診療の算定要件が厳し過ぎることが挙げられる。まず適応疾患が限られていること、それに加えて3か月ルール(3か月に1回対面診療)、6か月ルール(オンライン診療を始める前6か月の対面診療)、12か月ルール(12か月以内に6回対面診療)、さらには30分ルール(緊急時に当該医療機関から30分以内で対面診療可能)など、規制づくめだ。30分ルールなど、遠隔診療の趣旨から考えるとおかしな規制としか言えない。
しかし日本ではこうした規制事例が医療・介護分野に限らず一般の経済活動についても実に多い。何か問題がおきるとマスコミが過度に反応し、その対応として規制がさらに厳格化し市場の活動に制限がかかる。
こうした規制については以下の態度で臨むべきだろう。規制は必要最小限にとどめて、事後的にその活動をチェックする事後主義に重点を置く。規制と市場の自由を天秤にかけるとすれば、市場の自由を選択すべきだろう。
国際医療福祉大学大学院教授
武藤正樹氏
1974年新潟大学医学部卒業、国立横浜病院にて外科医師として勤務。同病院在籍中86~88年までニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学。94年国立医療・病院管理研究所医療政策部長。95年国立長野病院副院長。2006年より国際医療福祉大学三田病院副院長・国際医療福祉大学大学院教授、国際医療福祉総合研究所長。政府委員等 医療計画見直し等検討会座長(厚労省)、介護サービス質の評価のあり方に係わる検討委員会委員長(厚労省)、「どこでもMY病院」レセプト活用分科会座長(内閣府)、中医協調査専門組織・入院医療等の調査・評価分科会座長
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