---第83回 課題山積 大胆な規制緩和を---
2月下旬に内閣府で開催された規制改革推進会議医療・介護ワーキング・グループ(座長=大石佳能子メデイヴァ社長)に専門委員として出席して驚いた。以前より介護サービスの現場では書類の多さや手続きの煩雑さが問題視され、厚労省も2020年代初頭には「文書量半減」を目標としているが、現状は、半減どころか依然として介護事業所の保管棚には各種書類が溢れ、増える一方だ。
まず実態を見ていこう。介護分野では以下のような文書が飛び交っている。指定申請関連(事業所の人員・設備基準等)、報酬請求関連(加算要件等)、指導監査関連、ケアプラン関連文書など。自治体によって様式や解釈の差異などのローカルルールでさらにこれらの書類が増える。
そこで効率化のため、申請様式・添付書類の「手続きの簡素化」、自治体ごとに異なる「ローカルルールの解消」「ケアプラン・ケア記録のICT等の活用」が挙がる。
まず手続きの簡素化について見ていこう。手続きの簡素化は、指定申請や報酬請求における「押印の廃止」が挙げられる。押印は法令が求めているわけではないが、自治体の現場で「原本確認」のために求めることが多い。改善策としては、押印を求める書類を指定(更新)申請書、契約書等に限定し、それ以外の押印は廃止する。
次に書類提出の簡素化はどうか。新規指定申請については事前説明や面談の機会等を含めて一度は対面の機会を設ける。しかしそれ以外の更新手続きや複数事業所を運営する場合は更なる対面を必須としないなど、ケースに応じ郵送やメールに切り替えて簡素化する。
ICT化では、今後検討されるウェブ入力や電子申請とケア記録等のICT化がリンクして進むことで、例えばケア記録作成業務と報酬請求業務を一気通貫で行える仕組みや、ケア記録の電子保管によるペーパーレス化などが考えられる。
特に新規ケアプランの作成、認定更新時などに作成書類が多く、利用者1人あたり16枚程度にもなる。また、利用者票についても押印は必須ではないが、同意を得たことの証明のために印鑑をもらうことが一般的で、書類増の原因になっている。事業者により異なる介護ソフトを利用しているとデータの互換性がなく、ペーパーレスが進まない。現在進行中のAIケアプランが始動しても互換性がなければ効率化につ繋がらない。
以上、山積する課題を解決するには、よほどの大ナタを振るわなければ今後10年経っても事情は変わらない。まずは押印廃止、ローカルルール解消、介護ソフトの互換性の仕組みづくりが喫緊の課題だ。介護人材不足の中で、現場の業務効率化とそれを妨げる規制の緩和が待ったなしだ。
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