連載第26回 文化を受け入れる(ラマダン)
技能実習生を受け入れるにあたり、出身国の文化も受け入れてほしい。
2月の連載では、ベトナムの「テト」と呼ばれる元旦節を取り上げたが、今回はベトナム同様に実習生の多い国であるインドネシアの国民全体の約9割を占めるイスラム教徒のラマダンを取り上げる。
イスラム教徒には守るべき5つのルール「5行」があり、うち1つが断食月(ラマダン月)に行う「サウム」と呼ばれる断食だ。ラマダンの期間はイスラム暦で年1回1ヵ月間。今年は4月24日から5月23日におよぶ。今号の発行日も断食まっただ中だ。この期間、イスラム教徒は日の出から日没までの間、一切の飲食をしない(日没から日の出までの間に一日分の食事と水分を摂る)。また、欲を絶つことで自身を清めるとの教えがあるため、喫煙や性行為などの行為も禁止とされる。イスラム教徒はこの断食を6~7歳くらいから開始し、徐々に体を慣らしていく。空腹や自己犠牲を経験することで、飢えた人や平等への共感を育むことを重視するという厳格な教えである。
レバラン有休も
また、インドネシアでは、イスラム断食明け大祭(レバラン)期間に有給休暇を一斉消化日として取得するが、政府は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、今年の日程を12月28~31日に変更した。これにより、レバラン休暇は当初予定された12連休から、5月21日~25日までの5連休に。レバランにあわせた帰省についても今年は禁止となった。
繰り返しになるが、インドネシア国内のことであるので、必ずしも日本の受入法人が合わせる必要はない。監理団体も、実習生に日本に慣れてもらえるよう、▽日本と文化が違うこと▽日本と祝祭日が異なること―などを入国前から説明している。
しかし、インドネシアで暮らす実習生の家族や友人はそういったスケジュールで日常生活を送っているのも事実だ。実習生がラマダン期間の日中に飲食をしなかったり、レバラン期間に有給休暇を申し出たりすることがあるだろう。ぜひとも読者の皆様は、その背景にある現地の文化やイスラム教を理解して、可能な範囲で前向きに対応してほしいものだ。
庄司孝正氏
ライフケア医療介護事業協同組合 専務理事
1999年から大手企業グループで介護保険制度スタートに伴う新規事業立ち上げプロジェクトに参画。以降およそ20年にわたって介護業界に身を置き、施設運営や企業経営などに従事。2017年からライフケア医療介護事業協同組合の専務理事を務めている。現在は監理団体での外国人技能実習制度に関する業務に携わるほか、介護分野における同制度の普及・啓発に向けた活動を行う。
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