似た疾患が多く的確な診断が大切
手足の震えや筋肉のこわばり
パーキンソン病とは、脳が出す運動の指令がうまく伝わらずに、思うように動けなくなる病気です。脳の指令を神経に伝える役割を果たすドパミンを作り出す脳の黒質と呼ばれる部位の神経細胞が減少してしまうために起こると考えられていますが、なぜ黒質の神経細胞が減少してしまうかの原因は、まだ十分に解明されていません。
厚生労働省の2017年「患者調査」によると、女性の比率が高い病気で、65歳以上が55.6%を占めています。
主な症状は、手足の震え(振戦)、筋肉のこわばりやそれにともなって無表情になる(仮面様顔貌)などです。動きが遅くなったりバランスを取りづらくなったりすることで歩行困難(こきざみ歩行など)になったりします。
また、便秘がちになる、においを感じにくくなる、抑うつ感、睡眠障害などがきっかけで医療機関を受診し、パーキンソン病が見つかるケースもあります。よく似た症状が出る疾患が数多くあるため、正しい診断を受けることが大切です。
作家の落合恵子さんに取材したとき、「(介護していた母親が)3年間ずっとパーキンソン病だと言われていて、サードオピニオンまでいってようやくアルツハイマー病と分かりました。もう少し早く的確な診断がなされていたら……」といった内容の話をされていたのが印象的でした。前回触れた認知症の人がパーキンソン病と診断されることも少なくありません。
症状の進行は、一般的に5期に分かれています。
1期 : 手足の片側のみの症状が出る
2期 : 手足の両側に症状が出るが日常生活は行える
3期 : 姿勢反射障害が出はじめるが仕事はこなせる
4期 : 歩行に介助が必要になる
5期 : 歩行が困難になり、車椅子が必要となる
また、軽い記憶力の低下などが起きる場合もあります。
治療の中心となるのは薬物療法です。減少したドパミンを補うための薬と、ドパミンが減ったために働きが弱まっている他の神経細胞の働きを助けるための薬が中心です。
このほかにもパーキンソン病による歩行困難や手足の震えといった症状を緩和するために、脳深部刺激療法と呼ばれるドパミンの代わりに電気的刺激で神経細胞のネットワークを活発化させる手術が行われる場合があります。
次回は「がん」
秋山晴康氏
物流誌、エンターテインメント誌、旅行情報誌の編集長を経て、介護雑誌「かいごの学校」(日本医療企画)を編集。その後、医療ムックの編集・発行人、週刊誌への記事広告掲載など医療編集に携わる。
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