スポンサーリンク

 

 

COVID-19により、世界が文明の転換期を迎えているなか、33年の歴史を持つ日本医学ジャーナリスト協会も、初のオンライン例会を開催した。ゲストスピーカーは、ケアタウン小平クリニック院長の山崎章郎先生。

〝看取りの第一人者〞の講演をオンライン視聴できるとあって、全国から数百名が殺到した。

 

患者と家族が主人公の最終章に同行

 

山崎氏は、1990年に著書『病院で死ぬということ』(主婦の友社、現・文春文庫)を上梓し、緩和ケア病棟の大切さを訴えた。当時、日本の一般病院における終末期医療では、患者は最後まで真実を知らされることはなかった。

 

「頑張れば治る」などと説明を受け、悪化し続ける病状に疑問を感じながらも、偽りの希望にすがるように必死に生きていたという。苦痛を緩和する医療もまだ未熟で、自分らしく尊厳をもって最期を迎えるなどとは程遠いものだった。

 

 

悲惨な終末期医療の実情を何としても変えたかった山崎氏は、91年、16年間の外科医の生活に終止符を打った。そして念願のホスピス医に転向し、東京都小金井市にある聖ヨハネ会桜町病院ホスピスにて、あるべきホスピスケアを目指して集まったスタッフ、ボランティアの人々とチームで取り組んだ。

 

 

 

94年には、患者と家族が主人公のホスピスケアを実現すべく、院内独立型ホスピス棟を誕生させた。14年間で1千数百人以上、患者の人生の最終章に同行した山崎氏は、次のステージとして2005年より東京都小平市にて24時間の適切な緩和ケアを目指す、在宅ホスピスケアに臨んだ。

 

 

 

その2年後、わたくしはケアタウン小平クリニックへ見学で訪れた。山崎氏の印象は、どこか暖かで、物語の読み聞かせのような語り口は、何とも心地良い。まさに〝緩和ケアの達人〞の音色によって、患者は閉塞感を打ち破り、自己肯定感を手に入れるのかもしれない。

 

緩和ケア病棟(ホスピス)と在宅緩和ケア(在宅ホスピス)の両方を経験し、今日まで長きに渡り心を尽くして、ようやくたどり着いた地平に見えたものは何か?

 

 

 

その答えが、著書『「在宅ホスピス」という仕組み』(新潮選書)にギュッと詰まっている。

山崎氏は、緩和ケアの本質は、日本ではほとんどなじみのない「スピリチュアルペイン」の概念を理解することだと強調する。

 

ライフワークとして「スピリチュアルケア」に取り組んできた目的は、「この言葉の登場と、その従来の抽象的な論理展開に翻弄され、必要だと思うけれども、難解でしり込みしていた、医療・看護・介護の現場の皆さんが、自信を持って日々の仕事に取り組める、一助となる理論を構築することだった」と語る。

 

現在のわが国では、おそらく最も分かりやすい理論になっているのではと、山崎氏は自負する。本書のなかで探究の旅をご一緒にいかがだろうか。

 

 

 

 

小川陽子氏
日本医学ジャーナリスト協会理事。国際医療福祉大学大学院医療福祉経営専攻医療福祉ジャーナリズム修士課程修了。同大学院水巻研究室にて医療ツーリズムの国内・外の動向を調査・取材にあたる。2002年、東京から熱海市へ移住。FM熱海湯河原「熱海市長本音トーク」番組などのパーソナリティ、番組審議員、熱海市長直轄観光戦略室委員、熱海市総合政策推進室アドバイザーを務め、熱海メディカルリゾート構想の提案。その後、湖山医療福祉グループ企画広報顧問、医療ジャーナリスト、医療映画エッセイストとして活動。2019年より読売新聞の医療・介護・健康情報サイト「yomiDr.」で映画コラムの連載がスタート。主な著書・編著:『病院のブランド力』「医療新生」など。

 

 

 

この記事は有料会員記事です。
スポンサーリンク

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう