エクサウィザーズ(東京都港区)は2019年9月から動画コミュニケーションアプリ「ケアコチ」を提供している。ICTやAIにより人手不足で悩む介護現場の負担を軽減するのが狙いだ。既に介護施設や訪問介護などの居宅介護サービス事業所での導入が進んでいる。
【シンプルな機能であらゆるシーンで活用可能】
同社が提供する「ケアコチ」とは、スマートフォンやタブレットで撮影した動画をアプリにアップロードすることで即座に共有され、現場スタッフが同アプリでいつでも視聴することができるものだ。機能がシンプルである分、多様なシーンでの活用が可能だ。
東京都板橋区の特別養護老人ホームでは機器の操作や配薬手順などのマニュアルの動画化に利用している。紙のマニュアルは詳細な部分を口頭で補足する必要があり、改訂に手間がかかるが、スタッフが解説しながら実施する場面を撮影するだけで動画がそのままマニュアルになる。手順が変更になり改訂が必要になっても、新しい手順の実施を再度撮影するだけで完了する。
さらに新入職員の研修でも効果が出ている。この施設で働く研修担当者は「新人スタッフに教える手間が省けた。OJT中に他の業務が入ることもあるため、動画を見ておいてということもでき、感覚的に研修の時間が半分ぐらいに減った。」と話す。
【アセスメント視点を持った現場を作る、歩容解析AI】
AIによる歩容解析機能が搭載されているのも「ケアコチ」の大きな特徴だ。5メートル程度の直線歩行の様子を撮影し、ケアコチにその動画をアップロードするだけで、歩行の状態をAIが解析し、歩行速度などの歩行指標の数値や、それらに基づいた転倒リスクの予測ができる。
最大の特徴は、センサーやウエアラブル機器などの装着具が一切不要で、スマホで動画をとるだけで歩行状態の評価が可能ということだ。普段の歩行の様子や機能訓練時の歩行を撮影しアップロードするだけで、AIによる歩行解析が完了する。時間にして、1分程度だ。AIの開発には10年以上の経験を持つベテラン理学療法士などが携わっており、複数の理学療法士による歩行評価時の視点や評価結果をAIに学習させているという。
解析結果はコミュニケーションシートと呼ばれるA4サイズ2枚でまとめられ、転倒リスクに関連する4つの指標を確認できる。また、撮影を重ねることで評価結果の時間的な変化も確認可能だ。コミュニケーションシートは数値の持つ意味を、専門用語を使わない形でわかりやすく指標化しており、機能訓練指導員のみならず、ケアスタッフに加えて利用者や家族、ケアマネージャーとのコミュニケーション材料としても活用されている。
兵庫県に展開されているデイサービスの機能訓練指導員は、「体力測定する時間が短縮され、根拠に基づいて説明できるので、説明しやすくなった。加算計画書や実施記録に活用している」と活用場面を紹介してくれた。また、このデイサービスのご利用者は「右に偏った歩き方をしていることがわかり、頑張って改善していこうという気持ちになった」と話し、モチベーションアップにもつながっていることが窺えた。
【『ウィズコロナ時代』での活用】
エクサウィザーズは「ウィズコロナ時代」を見据え、「ケアコチ」を使った新しいサービスの提供も始めた。それが「動画でお家トレーニング」だ。
外出自粛やデイサービスへの通い控えにより運動機能の低下が心配される中、デイサービスと利用者の繋がりを保ちつつ自宅での運動を促すものだ。同社が提供する家でできる運動の動画やデイサービスで実施しているいつもの運動を利用者に配信し、利用者はその運動を家で実践、その様子を撮影、ケアコチにアップロードし、デイサービスのスタッフがコメント動画や赤ペンで返信するという流れになっている。
新型コロナウイルス感染症の第二波、第三波が懸念され、『ウィズコロナ時代』の戦略を考える事業者からの問合せが増加しているという。実際に利用を開始したデイサービスの理学療法士によると、「離れていてもお互いに顔を見て『あなたを見ていますよ』ということがしっかりと伝わるのが利用者にとっても嬉しいみたいです。家族の協力が必要な部分もあるため利用者とスタッフ間の繋がりだけでなく、家族同士の繋がりにも役立っています。」と一定の効果を感じており、「こういった時期だからこそ、新しいテクノロジーをどんどん取り入れ、 対話や繋がりを途絶えさせないために工夫し、少しでも自分たちのサービスの質を向上させていくことが大切です。」と新しい時代の戦略を考えている。
【ケアコチ説明希望フォーム】
ケアコチ/歩容解析AIに関する問い合わせは下記の説明希望フォームよりご連絡ください。
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