(8月5・12日号より続く)
大曽根住宅では、2017年に70戸を改修してサービス付き高齢者向け住宅に転換。運営はコミュニティネット(東京都新宿区)が担うことに。11階建ての1号棟と2号棟で、もともとは古いタイプの和室主体の3DK構造だった居室を、バリアフリーの整備や洋室への改装などにより1LDKタイプに転換。居室は3タイプあるが、LDKは全て13畳以上あり、車椅子でも動きやすい空間が確保されている。
改装後、「ゆいま~る大曽根」として1期と2期に分けて居住者を募集。20年6月時点で入居率は95%を超える人気の物件だ。
分散型サ高住の魅力
「分散型サ高住は、ごく普通のマンションや団地に住んでいる感覚が魅力。名古屋市の中心部まで30分以内と交通の便も良い。さらに、居室の広さの割にお手頃な価格帯にしたことで人気が高い」と説明するのはコミュニティネット営業推進グループの村岡鮎香部長。
1LDKの49.95平米が月額6万3600円~7万7000円で借りることができる。家賃とは別に生活サポート費は単身で3万8500円、2人入居は4万6200円、このほか共益金が月額5000円、入居時に敷金として家賃2ヵ月分が必要となるが、名古屋市内におけるサ高住で45平米以上の住戸は、全体の20%未満にとどまる。
現在の入居者の内訳は女性の独居が約6割、夫婦2人入居と男性の独居が2割ずつ、といった比率だという。60歳代から最高齢は93歳まで年齢層は比較的幅広い。ゆいま~る大曽根の石黒浩子ハウス長は「アクティブで、プライベートを大事にする方が多いですね。住まいへの愛着も強い印象です」と語る。
愛知県住宅供給公社は大曽根住宅にサ高住を組み込むのと同時期に、別棟に子育て世代対象のファミリー型住宅を改装整備し、多世代・多角的なコミュニティーづくりを実施。昔からの住民に、サ高住の住民とファミリー世帯の新しい住民が加わることで活性化を図った。ゆいま~るの住民も、「フロント前の花壇で、団地に暮らす子どもと一緒にガーデニングをしたり、団地の自治会の役員を務めている人もいて、『大曽根住宅』の一員としての意識も強い」(石黒ハウス長)。
ゆいま~る大曽根では、セコムと提携した365日24時間のICTによる見守り体制に加え、1階にある事務所(フロント)に入居者の名前を書いた「木札」を置き、毎朝無事を確認する仕組みも取り入れている。「アナログなコミュニケーションですが、毎朝1度、部屋から出てきてもらい、フロントで挨拶したりお茶を飲んでもらったりコミュニケーションを図ります。お隣の『ソーネおおぞね』で朝食を摂る方も多いです」(石黒ハウス長)。
今後の課題の1つに住民の介護度の進展に伴った新たな見守りや医療・介護サービスとの連携が浮かび上がっている。中長期に、介護の重度化や看取りといった「在宅介護」を考える時期が近づいている。
「家族の希望で介護付施設へ移られたご入居者もおられますが、大半はここで住み続けたいという希望が強い」(石黒ハウス長)、「元気なときから介護が必要になってからも『自宅』で暮らす。この望みを叶えるために試行錯誤しています」(村岡部長)
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