自身の旅立時 一緒に棺へ
NHK大河ドラマのタイトルにもなった、真田幸村が大阪に築いた「真田丸」。その真田丸の目の前に建つ高野山真言宗隆法山興德寺は「誰でも自由に訪れることができるお寺」を掲げており、様々な取り組みやイベントを実施している。中でも、着物を天国への旅立ちのときの装束である袈裟にリサイクルする講座は10年以上続く人気となっている。
「最近は防犯上の観点などから門を閉めるお寺も多い中、当寺は先代住職の『お寺は本来、無料で誰でも自由に訪れることができるもの』との考えのもと、山門は1年中朝6時半から日没まで常に開けています」と青木隆興住職。
5年前にはプロのイラストレーターを起用した漫画パンフレットを作成したり、ホームページを充実させたりと、情報発信にも力を入れており、ホームページを見て檀家になった人もいるという。
また、「1人でも多くの人にお寺に足を運んでもらい、仏教や仏様を身近に感じてもらいたい」と、境内を活用したイベントも数多く行っている。例えばヨガ教室は月に2回外部講師を招いて実施。1回15人程度が参加する。ヨガの前にはお勤め、終了後には住職の法話が行われる。「本堂の中で行っているのですが『この雰囲気がいい』と好評です」
このほかに写経会、本堂の音響効果を活かしたJAZZライブなども行っている。最近では「YouTube用の映像に日本的な場所を使いたい」という依頼を受けて、本堂で津軽三味線演奏の映像撮影も行ったという。
そうした中でも、先代住職の時代から続いているのが「糞掃衣」づくり。糞掃衣とはボロ布を継ぎ合わせて作った修行僧用の衣服のこと。黄褐色に染められることが多かったが、その黄褐色を表すサンスクリット語の音を漢字で表したのが「袈裟」である。現在では新品の布を使って作ることも多いが、小さな布を縫い合わせることは変わらない。
最近は断捨離ブームなどで、着物を処分したいというニーズが増えている。こうした思い出の詰まった着物を、捨てたり売ったりすることなく、自身の手で、天国への旅立ちのときに着せてもらったり、棺にかけてもらったりする袈裟に作り変えるこの講座は月に1回のペースで開催。参加者にもよるが数ヵ月~1年程度で袈裟を作ることができる。自分のために作るだけでなく、家族や友人にプレゼントする参加者も多いとか。
参加費は1回1000円。着物は原則として自分で持ち込むが、寺側でも布地を用意しており無料で使用できる。また、寺では着物の寄付も受け付けている。
「着物をリサイクルする場合、小物でしたら自宅でも作れます。しかし袈裟は大きいので作るのには広いスペースが必要です。その作業場としてお寺の客殿を使ってもらっています。結果的に皆さんがお寺に集まり、交流することに繋がっています」
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