【連載第17回】段差の有無
「道路」に関する国のガイドラインでは、歩道と横断歩道の段差は「2センチ」と定められている。「段差はない方がいいのでは?」と思われるかもしれない。もちろん、車椅子使用者などには、段差ではなくスロープの方が望ましい。しかし、目の不自由な人にとっては、歩道と横断歩道の境に段差がないと境目が分からず、命の危険にもつながる。そこで、当事者間で議論と検討を重ね、車椅子で越えられ、白杖で確認できる「2センチ」の段差をつけることとなった。
しかし、街には2センチ以上の段差がいたるところに存在する。利用者の多い駅や施設には、階段だけではなくエレベーター、エスカレーター、段差解消機、階段昇降機などが設置され、バスはノンステップバスが主流になりつつあるが、それでも段差や隙間がある場所が数多い。
それを解決するのがスロープである。介護保険のレンタル品でもあるスロープは、「車いす用可搬形スロープ」という名称で日本産業規格(JIS)にもなっている。スロープは、施設の入口や店先などに設置されているものもあるが、鉄道各駅では車椅子使用者が乗降する際、駅員が折り畳み式のものを持参し、ホームと電車の間に渡して使用されている。メーカーは軽量化、運びやすさ、折りたたむとき指を挟まないようにするなど、利用者の声を反映した工夫を行っている。また、都営地下鉄では、ホームから電車の入口に向けて傾斜が付き、車椅子使用者が駅員の補助なしで乗れる場所も増えている。
しかしここでも、段差をなくすと目の不自由な人は危険にさらされる。
「2センチの段差」のように、様々な身体状況の人を考慮した工夫がされることを願っている。
星川 安之氏(ほしかわ やすゆき)
公益財団法人共用品推進機構 専務理事
年齢の高低、障害の有無に関わらず、より多くの人が使える製品・サービスを、「共用品・共用サービス」と名付け、その普及活動を、玩具からはじめ、多くの業界並びに海外にも普及活動を行っている。著書に「共用品という思想」岩波書店 後藤芳一・星川安之共著他多数
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