HITOWAケアサービス(東京都港区)は2018年からパナソニック(大阪府門真市)と連携して見守りシステムについての共同実証を行っている。両社は7月、従来の「みまもり安心サービス」を発展させた介護業務支援サービス「ライフレンズ」を発表。HITOWAケアサービスの「イリーゼ練馬中村橋」での実証調査では、導入により91パーセントの夜間の巡視時間削減に成功した。
介護業界に対してどのようなビジョンでこれからも連携していくのか、HITOWAケアサービスの袴田義輝社長とパナソニックテクノロジー本部スマートエイジングプロジェクト山岡勝総括担当の対談を伝える。
―――連携開始から2年経ちましたがこれまでの経緯を教えてください。
袴田 HITOWAグループ全体の取組みとして2018年に行ったダントツプロジェクトがそもそもの発端です。各グループ会社が市場を牽引していく企業を目指してスローガンを決める中、HITOWAケアのスローガンはテクノロジーに注力する意向で「ダントツテクノロジープロジェクト」と決めて、思想やビジョンが一致したパナソニック社と連携しました。お互い中長期的な観点から行動に結びつけている点でも分かり合えていると思います。
山岡 当時のパナソニックとしても今後20~30年先という将来を見据えて、現状を変えるために新たな挑戦をしようと考えていました。そこで、共同開発を行うパートナー会社の選定が必要でした。HITOWAケアは業界への確かな思想や将来的なシナリオがあり、連携するパートナーとして選びました。
―――ライフレンズが夜間見守りにも効果を発揮する理由について教えてください。
袴田 従来のみまもり安心サービスでも夜間の巡視時間を削減できましたが、介護スタッフの精神的な負担を考えるとこれでは不十分だと感じました。夜勤の精神的負担が理由で退職するスタッフもおり、それでは安定した経営ができません。少しでも負担を減らすため、さらにシステムを改善してもらいました。
山岡 夜間見守りではひとりのスタッフが多くの高齢者を担当し、巡視の見落としなどのミスが運営にとって怖いことは現場のヒアリングで知っていました。その負担をさらに減らす必要があるという話はとても勉強になりました。
―――ライフレンズ開発にあたってお互い工夫したことは。
袴田 HITOWAケアでは共同実証を行っていく上で専門のチーム「CIT(ケアイノベーションチーム)」を新たに設立しました。所属メンバーは2名で、1人は運営ラインの者で、もう1人は入社4~5年目の女性社員です。彼らは介護現場もシステム機器にも精通し、現場目線で意見を伝えてもらえました。一例としては、全部の居室のカメラを1画面で一括表示にすると、どうしても各居室内の動きが気になり精神的に疲れてしまうため、一括画面上では各居室の温度や利用者の離床・就寝などの状態の表示だけにしました。
山岡 CITからの意見も参考にして開発したため、システム利用時のマウス操作回数などを極力減らして使えるようにする工夫など、扱いやすいシステムを目指しました。
―――両社の今後の展望について。
袴田 想いを持って仕事をしていても仕事の肉体的・精神的な負担が大きいと、つい「作業」になってしまいがちです。今回のライフレンズを導入することで生産性を向上し、その結果としてスタッフ一人ひとりが本来実現したい利用者のQOL向上の活動につなげてほしいと思っています。
山岡 次世代の介護運営のモデルケースを作っていきたいと考えています。それは日本限定ではなくグローバルに使えるものです。ITが介護現場のQOL向上に役立つことを証明するため、ライフレンズでどんどん現場のデータを蓄積して自立支援・業務支援を実現したいと思います。
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